qsonaのブログ

プログラマーです。

国立の小学校を受験したレポート

結論

子供が、学芸大付属世田谷小 (学世田) を受験した。結果は不合格だった。受験をやったこと自体は良かったと感じている。

以下、ざっくばらんに、やったことや感じたことのレポートを書く。結果が不合格なので、受からせたい親には何の役にも立たない(もしくは反面教師的な)レポートだろうけれど、うちのように、結果はともかくとして良い経験になればよい、というスタンスの人には多少役に立つかもしれない。

前提

学世田は国立なので、私立の小学校と違って学費がすごいかかるわけではない。試験は1000人くらいの応募 => 200人弱が合格 => そこから 抽選 で100人くらいが入学する権利を得る。ある程度家が近い人しか受験できない。

あらすじ

いわゆる"お受験"をするという選択はほぼ100%なかったのだが、2年前くらいに知人から国立の小学校良いよっていう話を聞いていて、それは良いかも、とは思っていた。が、特段塾に通うなどの準備はせず。

2ヶ月前くらいに、説明会があって、妻と子供で参加、その数日後に願書提出。「午前は混むので午後がおすすめです」と言われたので午後に行って出したら、番号が男子の中で後ろから5番以内だった(約500人中)。

試験前までの準備 (子供編)

これが正直結構難しかった。

全く前準備なしで挑むのもアレなので、小規模な塾での模擬試験を受けた(これも妻が探して連れて行ってくれた)。おおむねよく出来てるね、という評価だったらしい。対策テキスト的なのをもらってきたので、それを家でやることにした。

しかし、子供は保育園に9:00-19:00くらいで通っているので、根本的に親にも子にも時間がない。加えて、対策をしないといけない場所は子供が元来苦手な部分なのだが、苦手なことをやらせるというのは非常に苦労する。かつ、正直小学校手前の子供に苦手なことを克服させるというモチベーションがそんなにわかない(基本好きなことをやってたらいいと思う)というのもある。中学受験とかであればもう子供もある程度理解できるように成長しているので、苦手教科を勉強しましょう、みたいなのも伝わるようになるんだけど、保育園児となるとなかなかそうもいかず、親が焦りはじめて怒ってしまってうまくいかないみたいなことが容易に発生する。

例えば、基本的に聞き取り能力は長けてるのでペーパーテストはまあできる。なのでペーパーテストの練習はすんなりいくんだけど、元々まあできるのを一杯練習しても仕方ないわけで。

苦手なのは、聞かれたことに対する返答で、だいたい最低限必要なことしか答えない。最近就活の面接の「今日はここまでどのように来ましたか」ってやつがバズってましたけどw、そこまでではないにしても、ある程度相手の質問の意図を察して答える的なのが必要なようである。(直前にもちょっと家で練習してたけど、これに関しては4歳手前の娘のほうがずっと得意だった)

あと、紙をたたんでクリアケースにしまう、というようなテストがあるらしいのだけど、紙を素早く丁寧に折れる能力を上げたいというモチベーションが僕にないのであんまり頑張る気が起きない(まあ、楽しく練習する方法はあるんだろうけど)。

と、まああげればキリがないのだが、やはり結論プロに任せましょうという話で、色々余裕があるなら1年前くらいから塾に入れちゃうのが(受験のことを考えたら)楽なんだろうけど、これはこれでお金と時間のバランスもあるので難しいところ。他にも子供がやりたいことは色々あるし。さらにいうと国立小は受かっても抽選で外れる可能性が普通に結構あるので、受験の結果だけでなく成長のプロセスとして捉えないと効果が見合わないだろう。

まあ、とにかくそんなこんなで準備は完璧とは程遠かったわけだが、精神面の準備には結構気を使った。具体的には、プレッシャーは一切かけないこと。練習もやりたいだけやらせて、あまり押し付けがましくなく楽しくやるようにした。

ちなみに、当日の試験は14時からだったので、まあ保育園は休ませようと思って保育園の先生に言ったら、午前中は学芸会の総練習があるので出て欲しいのですが出られませんか・・・?と言われ、午前中は出席させた。これは本人の精神的にとても良かったように見えた。試験が午後からなのであれば、午前は普段通りの行動をしておくほうがリラックスできて良さそう。

試験前までの準備 (親編)

当日は「アンケート」という名の作文的なものがあるので、これの準備をする。

このアンケートなるものは合理的にできている。前提として、国立付属の小学校は、様々な面で特色があり、それを理解しないで入れてしまうとミスマッチが起きる。まず、位置づけが教育の実験のための学校なので、教育実習生がたくさんくるとか、カリキュラムが特殊だったりする(1・2年生までは教科書をほぼ使わないなど)。子供が自分で考えるということを非常に強調していて、その分いわゆる教科書的な内容を丁寧に教えるということには弱い。こういうことにそもそも考えが合わないと、入学後にクレームをつけたりと、お互いに不幸せになるので、ミスマッチを防ぐ必要がある。

これらの教育方針については私は心から賛同てきたし、子供にとっても合うと感じていた。準備としては、今一度学校の教育方針などの理解を深めるため、この学校での研究についてまとめられている本を買って一通り読むことをした(これは説明会で薦められていたもののようだ)。

試験の内容 (子供編)

試験中は親は控室にいて、一切子供の行動について知ることはできない。

今年は「小学生による紙芝居を聞く」というのがあったようだ。子供いわく「テストの合間の ひま な時間で、紙芝居を見せます」という案内だったようだがw、もちろんダウトである。どんな話だったかを聞いたところ大筋で答えられていたし、この話は知らなかった!みたいなことも言っていたので、本人的には熱心に聞いていたものと思う。(ただ、聞いていないようで聞いている、という態度を取ることがあるので、どう見られていたかは怪しい)

他に行動観察として、カプラという薄い積み木を時間内でどれくらい高く積めるか、というのがあった。本人曰く、一人で積んだそうだ。妻が掲示板で確認したところ、他の子達はグループで積むテストだったらしい。本当に一人で積んだのか、僕の聞き取りが悪かったのか、彼の中では一人で積んだ記憶になっているのかは不明である(試験直後にちらっと聞いただけで深く突っ込んで聞いていない)。だいたい20人くらいのグループごとに案内されていたが、うちの子供は最終グループで5人(1人欠席で4人)だったので、レギュレーションが違ったのかもしれない。保育園で毎日やっている遊びなので、楽しくやれたようだ。

それと面接。 「朝ごはんを食べましたか?」と聞かれたので、「はい。」とだけ答えたようだ。 思った通りである。妻が掲示板を見る限り、他の子の報告では「朝ごはんは何を食べましたか?」という質問になっているらしい。うちの子供は聞き取りはかなり強いので、聞き間違えることは考えにくい。多分、受験慣れしてる子はそう脳内で変換して聞いているのだろう。こればっかりは擁護してやりたい、お前が正しいと。

本人の中ではペーパー(聞き取って正しいのに○つけるやつ)で1問メッチャ難しい問題があって分からなかった、というのをしきりに言っていて、不合格なのを見た後も「1問むずかしくって、100点じゃなかったからだよ」と言っていた。その可能性は限りなく低い。

試験の内容 (親編)

控室で子供が試験に出てから15分後くらいに、先生が来て、アンケートと言う名の作文が配られる。これは徹底していて、詳しくは忘れたが「アンケートにぜひご協力ください」というスタンスで言われる。なので隣の親御さんが「メモを見てもよろしいですか?」と聞いたときに「ええ、もちろんどうぞ」と答えていた。確かにアンケートなのだからメモを見て悪いはずがない。しかし、回収の時間になったら書き終わってなかろうと問答無用で回収される。対大人なのでやわらかい口調なのだが、実態は「解答やめ!」と言われているに等しい。

内容は以下の4問。(記憶のみで、内容は正確ではない。また実際の問は です・ます調)

  1. 通っていた保育園/幼稚園で、良かったと思うことは何か
  2. 小学校での発達はめざましく、親が手を焼くこともあると思うが、子供をどう支えていくか
  3. 少子高齢化が進み、100年生きる時代になると言われる中で、学校・社会はどうあるべきか
  4. 小学校の先生に期待することは何か

制限時間は20分と言われた。上3つは書いたが4つめは書けず時間切れ。時計見ればよかったんだけどまさか20分経ったとは思わなかったので油断していた(正確に時間を見ていなかったが、実際は15分くらいで回収された気がする)。

一応、書いた内容の軸はだいたい以下のような感じ (文字数は結構ふえた)

  1. 各種行事が親への見せ物にならず、子供の自発的な行動によって作られていること
  2. 経験的には手を焼いてるときは親から押し付けてることが多く、線引きしてそれ以外は寛容になればよいのでは + とはいえ小学校生活は未知なので、耳を傾ける姿勢を続けたい
  3. 時代の変化に合わせて常に学んでいくことに対して、社会は寛容であるべき、学校は学び続ける姿勢を教えるべき
  4. (時間切れで未回答)

時間が少ないのでわりと瞬発的に書くしかなく、繕って書くのが難しい & 教育方針が如実に現れる問いが並んでいるので、ミスマッチ防止には一役買っていそう、と感じた。

試験終了後

アンケート終わったあとさらに45分くらい待っていて暇死するところだった。子供がわりと目を輝かせながら戻ってきて、第一声は「めっっっっっちゃ難しい問題が1こだけあった!」でその次が「でも楽しかった!」だったので、結果を見ずにもこの受験は成功だったって言って良いんじゃないかな、と感じた。

試験前は、少し緊張もあったのか、4人しかいないグループの中で一人だけ背筋をピンと張って待っていて、一つ前のグループの紙芝居で15分くらい待たされていたのもありw、緊張の糸がほどけないか少し心配だったが、戻ってきた様子を見ると、やりきった感じだった。

その後パン屋でパン食べながら内容について聞いたりして、帰宅。親は疲れ切った感じで、特に妻は何から何までいろいろ準備してくれていたので、精神的にも疲れていたと思う。私もなんだかんだで疲れた。ひたすら寝た。子供は元気だったけど。

発表まで3日あるので、その間に期待値調整をする。小学受験は親の受験と言われるがそれは半分その通りで、もともと、子供は小学校が何たるかなど理解していないし、ここの小学校に行きたい!なんていう気持ちを煽っても無駄というか逆効果だと思っている。本人が言っていたのは「テストは楽しそう、受けてみたい」というだけだ(だから試験当日に行く段になって「今日は本番?」なんてのんきな質問してきて笑ったけど、そういうもんだと思う)。だから、まあ結果が悪くてもそんなに傷つくことはないだろうとは思う。

あとは、当日のフローを子供向けに整理した。子供は最近 Scratch というGUIプログラミングみたいのにハマっているので、それを模して枠だけ書いて説明したら、割とちゃんと分かってたらしく、勝手に書き出した。

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発表当日のフロー(Scratch風)

発表は8時、抽選は9時なんだけど、10時すぎから娘の保育園のもちつき行事があったので、それが反映されている。ごうかくしなかったら「ざんねん!と言う」というのを自分で追加していて面白かったw。

あとは、国立の小学校と近くの公立の小学校を比べて、どっちにどんな良いことがあるか?というのを一緒に考えて話してみて、どっちも行きたいね、というポジティブな気持ちになるように心かげた。公立の方は保育園の友達も数人居て、一番仲良い女の子も行くので(めっちゃかわいい)どっちかというと本人はそっちのが行きたそう。国立の方の良いところの話で、「バスに乗っていけるね!」とかいっても「バスに乗るの、楽しいかなあ〜?」という至極真っ当な返答がくるなど。

結果発表

番号張り出し形式で、学校まで見に行った。ちょっと出遅れたのですでに張り出されていた。一生懸命さがして、番号がないことを確認して、「ざんねん!」と言って、帰ってきた。その後、(公立小の名前)に行くから良いんだよ、とすぐ言っていたけど、その素振りからはやっぱりちょっと悔しさに近い気持ちもあったのかな、と思った。

その後、娘の保育園のもちつきに行くために、戻ってきて合流。帰りのバスは眠さもあって微妙な空気感だったけど、妻が子供を抱きしめて、がんばったね!と言ってくれて、一区切りついたかな、という感じがした。

受験を通して感じたこと

まあとにかくフィードバックがないので、落ちた原因の分析のしようもあまりなく、推測すればキリがない。僕のアンケートの内容かもしれないし、字が汚かったからしれないし、・・・と考えたところで、何も確実なものもなければ次に活かせるものもない。合否そのものについては気にしても仕方ないかなと思っている。自分を責めてしまいやすい人は注意したほうがいいと思う。

一方で、プロセスや合否以外の成果を大事にするというのが、国立小受験においては良さそうだと思う。子供にとっては、テストらしいテストを受けたのはこれが初めてだし、それを楽しくできたなら良いんじゃないかなあ、と思っている。小さな塾にも何回か行ったけど楽しそうにやっていた。そもそもどんなに頑張っても抽選があるので合格可能性は60%までしか上がらないので、必勝を期する感じではなくて、子供の性格や教育方針にマッチするかと、過程を大事にできるか、というところで受験を考えればよいのかなと。

最後に、妻には本当に感謝している。大体こういうのはいつも僕が行動しなくて、妻任せになってしまうのだ。多分僕よりも妻のほうが、国立小に行かせたい気持ちは強かっただろうし、途中色々上手くいかないこともあったり、気持ちを整理するのが難しかったはずで。そんな中で、終わったあとも結果出たあとも、気持ちを切り替えてたくさん子供をほめてくれたりフォローしてくれた。最終的には、両親として子供のことをより強く信頼するという結果になって、今後家族として子供を支えていくために良いイベントにできたと思うが、それは妻の支えによってできたことだ。